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ADHDの治療 って?薬物療法、心理療法など治療法を解説!

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更新日

執筆:須賀 香穂里(ヘルスケアライター)
監修:豊田早苗(医師、とよだクリニック院長)
 
 
ADHDの治療 はどのように行われるかご存知ですか?
不注意や多動が代表的な発達障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)。その原因は脳にあるといわれています。
それではADHDを治療するにはどうしたらよいのでしょうか。
この記事では ADHDの治療法を大人/子ども別にご紹介します。
 
 

子どものケース

 
まず子どもにおける治療の方法ですが、ADHDは脳の発達障害であるため、いまだ脳が未発達な子どもは周囲の大人が対応を変えるだけでも効果があります。ここではADHD児童への対応のポイントと、心理学的な治療法を紹介します。
 
 

ADHD治療のポイント

 
《ADHDを理解する》
子どものADHDの症状を改善していくに当たって、家庭での対応に必要なのはADHDを正しく理解することです(1)。
親と子どもの両方がADHDの特徴や困難、強みなどを知っておくことが治療の第一歩となるのです(1)。これを怠ると、子どもは周囲から不適切な対応を受けて「自分はダメな子だ」と思い込んでしまったり、逆に親が「自分の教育が悪いのでは」と自分を責めてしまったりするのです(1)。
 
《子どもに説明する》
もしかしたら、自分の子供に「あなたはADHDという障害をもっているんだよ」と告げるのは気が引けるかもしれません。しかし実は、子どもはかなり早い段階から「自分が他の子とは少し違うかもしれない」ということに気が付いていることが多いです(1)。
そうして、自分が他の子よりもうまくできないことを見つけては落ち込んだり怒ったりして、だんだんと自信を失くしていってしまいます(1)。事情を説明するのは、子どもがすっかり自信を失くしてしまってからでは遅いのです。
 
ADHDが発覚したら、早いうちにそれを教えておいて、「その子ができないこと」ではなく「その子が特別できること」を指摘してあげると、子どもの自尊心の低下を防ぎ、問題の解消につながります(1)。
 
《子どもの自尊心を改善する》
ADHDの子どもは時に、うまくいかないことで自分を責めてしまいます。彼らは自分自身の能力をひどく厳しく評価して、「自分はダメな子だから」とか「どうせ自分にはできない」というような考えに陥ってしまうのです(1)。
このように自分に自信がない、自尊心が低い状態になってしまうと、より彼らの能力が低いほうへ低いほうへと落ちてしまう悪循環に陥りがちです(1)。
 
よってADHDを治療していく際に必要なのは、親や教師がADHD児童の自尊心を高めてあげることです。しかしただ褒めればいいというのでもありません。
複雑なもので、自尊心の低いADHDの子どもはただ褒められるとそれを否定的な意味に受け取ってしまうことがあります(1)。「私は褒められるほど成績が良くない」「馬鹿にされているのではないか」と疑心暗鬼になってしまうのです(1)。
 
親や教師は、ADHDの子どもの等身大の感情や考えを受け止めてあげてください。成績の良し悪しに関係なく、彼らの努力を認めてあげることが重要です。褒めるときには「よくできたね」「上手だね」などの言葉ではなく、「そのやり方はすごくいいね」とか「難しいことなのにやりきれたね」といった言葉を使いましょう(1)。
あくまで成績ではなく、本人の努力を褒めているということが分かるようにしてください。
 

ADHDの心理療法

ADHDの治療 の際、薬物治療と並行して心理療法が行われるのが一般的です(2)。心理療法は専門家との相談の元、その子どもに合ったプログラムを作成して実行します(2)。
 
《行動療法》
行動療法は、ADHDの子どもに社会的に何が良い行動で、何が悪い行動とされるのかを理解させ、正しい方向に導いていく治療法です。簡単に言えば、正しい行動をしたり、物事を達成したときには精一杯褒め、不適切な行動をとった時にはその行動を指摘して「この場合どのようにしたらよいのか」を教える、という方法です。
 
例えば、大人しく座っているべき状況で立ち歩いたりおしゃべりしたりしたら、「こういう場ではやってはダメ」ということをしっかり伝えます。そして最後まで大人しく座っていることが出来たら「最後まで我慢できて偉いね」と褒めてあげます。
 
行動療法の効果をより強く得るためによく用いられる方法に、「トークンエコノミー」というものがあります。これは正しい行動ができた時にはポイントを与え、ポイントがある程度溜まったら具体的にご褒美がもらえる、といったものです。
不適切な行動をとってしまった場合はポイントを減らすなど、罰則的なルールを取り入れることもあります。
 
行動療法のポイントは、不適切な行動に対して罰を与えることではなく、適切な行動をすることができた時に褒めてもらえるということが伝わるように行うことです。これによって、本人の意欲の向上や、自尊心の改善にもつながります。
 
行動療法を行うときの注意点は以下の2つになります。
 

  • ●褒めるべき行動は「少し努力すればできるもの」にする。
  • ●大人は辛抱強く子どもを見守る姿勢を保つ。

 
《精神力動療法(個人療法、お話療法)(4)》
この方法は、カウンセラーなどの専門家がADHD児童とマンツーマンで向き合うことで、いろいろな方面から支援していきます。
 
療法士が子どもと向き合い、プライベートなことや家族に対して思っていることなど、子どもが考えていることを気兼ねなく話せる機会を設けることで、自分への理解を促進します。その過程で自分や他人の行動の理解が進み、症状の緩和につなげることができます。
 
 

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大人のケース

 
大人は子どもと違い、サポートしてくれる親や教師がそばに居ないことが多く、個人で困難に立ち向かわねばならないことが多い点がネックになってきます。また大人の脳はすでに十分発達しており、子どもに比べて未熟ではありません。
 
そんな大人のADHDの治療における基本的な考え方は、生活の特定の場面で困難をもたらしているADHDの症状に介入し、緩和することです(5)。治療によって、本人がADHDの症状を理解し、コントロールし、上手に対処できるようになることが大人のADHD治療の目標となります(5)。
 

ADHDを理解する(5)

大人の場合でも、子どもと同じようにADHDの症状について正しく理解している必要があります。また大人の場合、「これまでやってこれたのだから、まさか自分が障害なはずがない」と信じられないような気持ちになることもあります。だからこそ大人になって初めてADHDであると診断されても納得できない方も多くおられます。
そこで専門家は、ADHDであると診断された患者に対して、
 

  • ●ADHDの特徴や症状
  • ●ADHDの原因
  • ●ADHDは生まれつきが多く、しつけや養育不良、人間関係などが原因ではないこと
  • ●これまで診断されなかったのは、子どもの頃に症状があまり気にならなかったり、他の方法で症状による困難をフォローしたりしていて見過ごされた可能性がある
  • ●ADHDが大人になってから発症した例はない

 
などといったことを患者のペースに合わせて説明し、理解を求めます。
上記のようなことが分かれば、患者は自分の障害が見逃されてきた背景や理由を理解しやすく、納得できやすいのです。
 

環境調整による症状の軽減

大人の ADHDの治療 にあたって、普段の生活でADHDの症状の出現頻度を減少させるために、患者の生活する環境を調整していくことも重要なポイントとなります(5)。
 
患者にはその日一日の行動を振り返り、今日は何がうまくいって何がうまくいかなかったのかを考える習慣をつけるように指導します(5)。そして患者が考えた生活の問題点を専門家がまとめ、より円滑に生活できるようにアドバイスをしていくのです(5)。
 
そのほか、患者自身が生活する空間の中にある、集中力を途切れさせる原因になるものを取り除いたり、イライラした時にひとりに慣れる場所を探しておく、仕事に必要なものを置く場所を決めておく、などの工夫も効果的です(6)。
 

心理療法

 
大人のADHDの治療では、子供の治療で行う行動療法トークンエコノミーではなく、認知行動療法を主体とした治療を行います。
 
《認知行動療法(2)》
行動療法と名前が似ていますが、症状へのアプローチ法は少し違います。先ほど環境調整による症状の軽減法を紹介しましたが、周囲が患者の周りの環境を患者に合わせて変えるのに対して、認知行動療法では患者が自分がいる環境を理解し、自分自身の行動や考え方を変えていきます。
 

  • ●環境調整:患者の周りの環境を変える
  • ●認知行動療法:患者の行動や考え方そのものを変える

 
この方法では、専門家が患者と話し合い、助言を行い、患者はそれを参考に自分の行動パターンを変えていくためのプログラムを実施します。そしてそのプログラムの方向性が正しいかどうかを専門家が見守ります。プログラムを行う中で思ったような成果が出ない時には、もう一度専門家と話し合って方向性を修正します。
認知行動療法は、専門家とのやり取りを通して時間をかけてADHDの症状へアプローチしていきます。
 
《ストレス・マネジメント(5)》
ADHDの大人は時に感情的になりやすく、イライラしたり落ち込んだりしてしまいます。そこで自分の感情を落ち着けるために、ストレス・コントロールの技法を身に着けることもADHDの症状を緩和するのに効果的です。
 
ストレス・マネジメントにはいろいろな方法がありますが、手軽に自分一人で行うことのできる方法に「段階的リラクゼーション法(筋弛緩法)」というものがあります。これは簡単に言えば、体中の筋肉を順番に緊張させたり弛緩させたりすることで、身体をリラックスした状態に導く方法です。
 
※編集部注:
イライラを抑える事について説明した「イライラを抑える にはどうしたらいい?イライラへの対処法をご紹介」
 
生理前のイライラに効く薬について説明した「生理前のイライラに効く薬 って?そもそも、生理前にイライラするのはなぜ?」
も参考にしてください。
 
 

薬物療法

 
大人/子どもの ADHD治療 で共通して用いられるのは薬を使った治療法です。ADHDは脳の中の神経伝達物質の量が少ないことが原因であるため、薬物によって神経伝達物質の量をコントロールすることで症状の軽減を目指すのです(1)。
 
薬物療法を用いるうえで注意すべきなのは、患者が薬物を使用した治療についてどのようなイメージを持つかです。患者が子供であれば、「自分が悪いことをしたから薬を飲まされる」のだと思い込んでしまう場合があります(4)。
また大人であっても、薬を飲めばすべて解決できると思う人と、「薬を飲む=自分は病人である/自分をコントロールできないことを認める」という考えから薬物療法を拒絶する人もいます(6)。
 
そこで、患者の治療に対する不安や疑問をきちんと聞き、なぜ薬を服用するのかを分かりやすく説明して理解してもらうことが重要になります(2)。
 
 

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ADHDの治療 自分で自分をコントロールできるようになる

 
現状、ADHDを完全に治すような治療法はありません(5)。そのためADHD治療で重要なのは、ADHDの症状と上手に付き合い、自分をコントロールできるようになることです。
 
今回紹介した通り、ちょっとした生活の工夫でADHDの症状は軽減することができます。ADHDの症状で悩んでいる方は、自分の生活を振り返ってみて、できることから始めてみてください。そのための足掛かりとして、この記事が役に立つことができれば幸いです。
 
 
【参考文献】
(1)マーク・セリコウィッツ(発達小児科コンサルタント)(2000).ADHDの子どもたち 金剛出版 pp.95-96,121-133
(2)ADHDガイド
(4)Alison Munden(バーミンガム小児病院オークランズ・センター児童青年精神科医) & Jon Arcelus(バーミンガム小児病院オークランズ・センター児童青年精神科医)(2000).ADHD 注意欠陥・多動性障害 親と専門家のためのガイドブック 東京書籍株式会社 pp.110-111,142-144
(5)ロバート・J・レズニック(臨床心理学協会)(2003).成人のADHD 臨床ガイドブック 東京書籍株式会社 pp.135-138,142,152-156
(6)大人のためのADHD
 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属
 
<監修者プロフィール>
豊田 早苗(とよだ さなえ)
鳥取大学医学部医学科卒業。2001年医師国家試験取得。総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年とよだクリニック開業。2014年認知症予防・リハビリのための脳トレーニングの推進および脳トレパズルの制作・研究を行う認知症予防・リハビリセンターを開設。著書に『あがり症克服プログラム』『3分ストレス解消法』など
 
 

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関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」サイトの中で発達障害について説明したページである発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省は、注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療などについて分かりやすくまとまっています。
 
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ADHD含む発達障害を分かりやすく説明した動画として以下のようなものがありますので、参考にしてください。

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